風俗は、得るものも失うものもある仕事。
というか得るものなんてお金くらいのものなんだけど、失うものと秤にかけたときに得るもののほうが大きいと思えるからこそ、みんなギリギリのところで病まずに、あるいは病みながらも風俗で働いてる。
でも、大きさではなく数で言えば、やっぱり失うもののほうが多いでしょう。
具体的には何だろう、男性への期待とか、性行為の楽しさとか、人間としての尊厳とか?
一度失ったら取り返せないものも多々ありますが、風俗を辞めた後に、ゆっくりとでも取り戻せるものがあるのもまた事実。
今日は、わたしが風俗を辞めてから取り返すことができたもの、つまり、風俗で働いているときはできなかったけど辞めてから実現できたことを、聞かれてもないのに一方的に紹介していきたいと思います。
仕事の話をしながら飲む
まずはこちら、普通に仕事の話をしながら、普通に飲む。
飲むって、歌舞伎町とかそういった歓楽街で飲むことじゃないです。
普通にスーツを着て働いているような人たちと、普通におやじさんがやってる個人経営の居酒屋で、普通に会社帰りに飲み会をするんです。
「今日の部長の話どう思う?」とか言って。しかも20時とかに。
風俗で働くような環境とは無縁ですくすくと育った方は、「何言ってんだこいつ」と思われるかもしれませんが、わたしたち風俗嬢は、そういった当たり前のことができない。
昔からの友達に風俗で働いていることなんてなかなか言えたものじゃないし、言ったところで理解が得られない可能性だって全然ある。理解が得られたとしても、同じ話では盛り上がれない。
だからと言って、同じお店の女の子とつるめば、気づけば財布からお金をとられているような始末。
なので、なんでもないような日々のことを話し合える相手がいることに気づいたときは、なんというか感慨深かった。
いやあ、当たり前のことができるって幸せですね。当たり前の日常に喜びを感じたければ、ぜひあなたも風俗で働いてみることをオススメします。もちろん責任は一切負いませんが。
好きな髪型、ネイルにする
お次はこちら、自分の好きな髪型にして、自分の好きなネイルにする。服や化粧だってそう。
風俗で働いていたら、とにかくこれができない。正確に言うと、やりにくい。
風俗は未だに、黒髪ロングの清楚キャラ信仰が根付いている旧体質な業界なので、髪をショートカットにして襟足を刈り上げてしまったとたん、指名が激減することは必至。
ボルドーのリップを塗れば「化粧濃いね」、ネイビーのネイルをすれば「そういうの男ウケ悪いよ」。
別にあなたのためにやっているわけじゃないんで、と言いたくなる衝動をいちいち抑えるのも大変だし、あとは風俗で働いている以上、お客様の期待には応えてあげるのがプロというものじゃないですか。
何より、稼ぐために働いているのに、稼げなくなってしまうのは悲しいしね。
なので、わたしもボブ〜セミロングを行き来しながら、色付きリップを塗って、透明ネイルだけの爪で風俗嬢やってました。
辞めた今は、シティボーイみたいな耳上の長さのショートカットで過ごしてる。ネイルも可愛い。暑くなってきて浮かれているので、親指のネイルに「夏」って書いてる。
男ウケより、自分ウケ。
もしかしたら、ちゃんと自分の感性を大切にできることが、現在進行形で一番嬉しいことかもしれない。
イケなかったら素直に伝える
最後はこちら。セッセセの話です。
風俗に来るお客さんって、ちょっと喘いでみせたら「もうイっちゃったの?」って言う率、異様に高くないですか?
あの、まだおっぱいしか触られていませんが…というケースも一度や二度の話ではないし、とにかく謎が深すぎる。
どんな育ち方をしたらそんな思考に着地するのか、お客さんには、ついぞ聞けなかったけど。
でも、風俗は大人のディ◯ニーランドなので、そんな彼らの夢を壊さないよう、わたしたちは心を込めて返事をするのです。
「うん、だって気持ちいいんだもん…」と。
ディ◯ニーと風俗はファンタジーなので、鵜呑みにするとヤケドします。待っていても王子様はやって来ないし、好きでもない男に触られて5秒でイク女は存在しない。
プライベートでメリットのないセックスは微塵もしたくないので、風俗を辞めてからは、イケないときはイケないことをちゃんと相手に伝えた上で、改善していけるようになりました。
それで怒るような男がいたとして、そんな奴と縁が切れたところで、何も困らないしね。
金とやりたかったことを秤にかけて
紹介した3つのことは、いずれも、風俗を辞めてから「ああ、わたしこんなことがやりたかったんだな〜」と気づくようなことばかりでした。
辞めてすぐの頃は自分の好きな格好すらもよくわからなかったし、仕事を見つけて、飲み会を楽しいと思えるようになるまでにも、性的なことを楽しめるようになるまでにも、ずいぶん時間がかかってしまった。
でも、いざそういったことができる環境に身を置いてみると、しっくり馴染んだ。
こういう自分になって、こういう生活が送りたかったんだって、腹落ちした。
代わりに収入は激減したし「これくらいの金、1日もあればすぐ稼げるのに」なんて思うことは今でも多々あるけれど、とりあえず、この生活が楽しいと思えているうちはゆるく続けていきたいなと思っています。
ではまた。