白地に赤文字で「角海老」と書かれた看板と、室内がまったく見えない黒い窓を有したビル。
もしあなたが都内に住んでいれば、渋谷や新宿、吉祥寺あたりで、一度くらいは「角海老」の文字を見たことがあるのではないでしょうか。
特に新宿・渋谷の角海老ビルは、先述の通り、かなり特徴的な外観。
あのただならぬ雰囲気の建物は何なんだろう…と調べてようやく、人々は角海老がまさかのソープランドだと知るわけです。
すごいビル。https://t.co/kTh9LCGNJVhttps://t.co/GP8xcuszTt#風俗 #新宿 #角海老 #角えび #ソープランド #ソープ pic.twitter.com/zYwl7iJgUh
— F2R (Fuzoku tsushin Report) (@F2R_news) August 10, 2019
ソープって、吉原とか堀之内みたいに、一定の地域に密集してるのが普通じゃないですか。
でも、角海老はおかまいなし。街なかにいきなり現れる。風俗に興味がなくても、嫌でも目にするような存在感。渋谷なんて交番のすぐ横に建ってるし、存在自体が最高にロック。
今日は、そんな風俗界のエルビス・プレスリー、角海老を紐解いてみることにします。どうぞ。
角海老の基本情報
①角海老は日本最大のソープグループ
角海老(かどえび)は、ソープランドの大手グループ。
展開はすべて関東圏内。渋谷・新宿・池袋・吉祥寺・吉原など都内に17店舗と、神奈川・千葉・茨城に14店舗の、計31店舗を経営していて、ヘルスやピンサロなどはなく、すべてソープランドです。
三浦屋や千姫など、角海老以外の名前を冠した店舗も多数展開。
同じくソープの大手グループとして知られるトゥルースグループでも、店舗数は全部で11なので、角海老は圧倒的な店舗数を誇る日本最大のソープランドグループなのです。
②価格帯は大衆ソープ
角海老の料金は、新宿角海老で70分23000円、吉原角えび本店で80分28000円とお安め。
ソープランドはお店に払う入浴料と、女の子に払うサービス料が別々になっているのが一般的ですが、先述の料金は入浴料じゃなくて総額です。
料金的には、いわゆる大衆店に分類されるでしょう。
③宝石店やボクシングジムも経営
先程、雷も鳴ってましたね(^_^;)
ほんで今日も臨時シフト出勤日。
「いま出来る仕事」シリーズ(笑)ジムの画像データを探すが見つからず、展示してるパネルを何とかスキャンをして保存。
左から、渡邉一久、榎洋之、イーグル、本望信人、小堀佑介。懐かしの1枚でした(^^)#角海老宝石ジム #5人衆 pic.twitter.com/sgsPDSLWw7
— 角海老宝石ジム-Kadoebi Hoseki Gym. (@kadoebigym) May 6, 2020
そんな角海老は、風俗以外の事業も展開しています。
角海老宝石や角海老宝石ボクシングジムなどがその代表。
とくに、角海老宝石ボクシングジムは、世界王者も排出している名門ジムとして知られています。
ほかにも不動産会社やバスタオル洗濯会社も経営していますが、おそらく、不動産は自社ビル、バスタオル洗濯会社は自社店舗で使うタオルの洗濯部門をそれぞれ別会社にした、といったところではないでしょうか。
角海老の歴史
④鈴木正雄氏が一代で築き上げた
驚くべきは、ソープランドやそれらの事業は、創業者である鈴木正雄さんが一代で築き上げたものだということ。
戦争を経験し、戦後に父を亡くし、高校時代に芸者を運ぶ人力車のアルバイトを始めたことをきっかけに、高校を中退して性風俗の世界へと入っていったようです。
⑤創業64年以上の歴史がある
一代とはいえかなりの老舗には違いないですが、実は、角海老の正式な創業年は不明。
角海老の母体である「角えび商事株式会社」の設立は1965年となっていますが、鈴木正雄さんの伝記である『公衆トイレと人生は後ろを向いたらやり直し ソープの帝王 鈴木正雄伝』によると、
といった旨の記述があるので、どんなに少なく見積もっても1956年には1号店をオープンさせていた、つまり2020年の時点で創業64年以上の歴史があると考えてよいでしょう。
⑥名前のルーツは吉原遊郭の角海老楼
角海老(かどえび). 吉原遊廓に存在する屋号。明治時代に吉原で奉公していた宮沢平吉が「角尾張楼」という見世を始め、その後「海老屋」という見世を買い取り、そこに「角海老楼」という時計台付きの木造三階建ての大楼を建てたのが起源とされる。時計ってのが斬新な時代ってことか。 pic.twitter.com/TJT6rIz4vd
— マッチの世界 (@haninnwa15) June 15, 2018
こうして「あけぼの二号店」として始まった店は、鈴木さんが輪タク時代に出入りのあった吉原の店から名前を受け継ぎ、「角海老」に。
もともとあった角海老は、戦前から営業をしていた高級店で、歴代総理が遊びに来るほど格式の高い店だったのだとか。
店名の由来については「角海老楼」という高級見世がルーツという説もあり、鈴木さんはそんな角海老の名前を継ぐにあたって、
「おまえ、『角海老』の名前を継いでもいいけれど、よけいな気遣いはいらないし、菓子折りなんか絶対に持ってくるんじゃないよ。ただ、『角海老』の名前を汚すような真似だけはしないでおくれ」
(『公衆トイレと人生は後ろを向いたらやり直し ソープの帝王 鈴木正雄伝』より)
と言われたそう。
今の角海老は「角海老楼」と直接的な関係はないにせよ、浪漫があってよいですね。
⑦創業者は10回の逮捕歴がある
しかし、そんな鈴木正雄さんには、実は10回の逮捕歴があります。
名前を汚さない話はどうしたと思いきや、うち3回は有罪判決で、7回は不起訴処分。有罪判決にしても脱税などは一切なく、すべて執行猶予付きで釈放されています。
つまり、怪しいと思って逮捕してみたけれど、掘っても何も出てこなかったということ。
10回も逮捕暦があるのに刑務所生活は0回というのは、そんなことある…?ってレベルの珍しさ。
⑧創業者は「ソープの帝王」として健在
そんな、業界最大手グループの創業者にして、数々の伝説を持つ鈴木正雄さん。
「ソープの帝王」の異名でも知られていますが、まさに、その名にふさわしいと言えるでしょう。
鈴木さんは2020年時点で88歳と、現在もご存命です。経営の第一線からは退かれていますが、長生きして今後の角海老も見守っていってほしいですね。
角海老のサービスの理由
⑨お土産を渡す文化がある
角海老グループでは、お客さんにお土産が渡されます。
これは、名前をくれた角海老に倣った文化で、お客さんに対する気遣いゆえ。
タオルやメモ帳、マスク、靴下など、その時々でノベルティグッズは変わるようですが、粋だな〜と思ったのはこれ。
今年も、ソープランド『角海老』のうちわ無料配布が始まりました。3種類あり。女性でももらえますよ pic.twitter.com/3t0XK1i7eu
— 仙頭正教 (@sento1025) June 6, 2019
洒落てるし、普通に欲しい。
⑩グループは全店完全S着
そしてお客さんに対してのみならず、角海老では女の子に対しても「確定申告は絶対にさせる」などの思いやりが。
中でも、とくに徹底しているのが、角海老は全店完全スキン着、つまりコンドーム着用サービスのみということです。
31店舗もあれば、NS(ノースキン)店や嬢がいてもおかしくなさそうなのに、角海老はそういうことをしない。それはきっと、鈴木さんの思いが根底にあるからだと思います。
女の子たちにしても、この業界から足を洗って少しでも良い人生を送ってもらって、「昔はこの店でせわになったんだな」なんてことを思って貰えればと思ってやってきたんです。そのためには「あくどいこと」を絶対にやっちゃいけないんです。
(『公衆トイレと人生は後ろを向いたらやり直し ソープの帝王 鈴木正雄伝』より)
角海老グループはコロナで全店休業中
60年以上も営業していれば変わっていくこともあるだろうし、会社の思いと現場の声は必ずしも一致しないのが世の常だけど、働くんだったらこういう店で働きたいなと思わされました。
というのは嘘で、わたしはできればもうちょっと手取りが高いお店で働きたいです…
でも、こういう人情味あふれる話に弱いんですよね。『公衆トイレと人生は後ろを向いたらやり直し ソープの帝王 鈴木正雄伝』は絶盤ですが、まだamazonにはあるようなので、興味のある方はぜひ。
そんな角海老グループも、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けて、全店営業自粛中です。
いや、わからないけど、もし鈴木さんが経営判断に関わっていたとしても、女の子のことを思って休業してたんじゃないかな。
ではまた。